筋肉の基礎知識

筋トレ解剖学

筋肉の役割

役割内容
熱生産
体温の維持
筋が運動する際、脂肪や糖質を燃焼することで熱を生み出し体温を維持
一般的には身体が発する熱の約40%は筋肉から発生していると言われている
姿勢の保持筋収縮によって関節を安定させることで姿勢を保つ
内臓•骨の保護内臓を保護する骨のない腹部では内臓が定位置に収まり
正常な働きができるのは「腹横筋」などたくさんの筋肉が複合的に働いて保護
体液循環の補助筋の収縮•弛緩を繰り返すことで筋肉がポンプの役割を果たし血液やリンパなどの体液の循環を助けている
心臓から遠い下肢における体液の循環では血液やリンパを上半身に戻すために重要な働きをしている
物質の貯留•移動胃の蠕動運動によって食物を少しずつ十二指腸に送り込んでいる
幽門括約筋が収縮しながら胃の筋が働くことによって、食物の物理的な破壊もできる

筋の分類

筋の種類分布内容
横紋筋
横紋構造のある筋
骨格筋随意筋
意識的に動かせる筋(体性運動神経)
横紋筋
同上
心筋
心臓壁の筋肉
不随意筋
意識的に動かせない筋(自律神経)
平滑筋
横紋構造のない筋
内臓筋
消化管・血管壁・内臓の筋肉
不随意筋
同上
※例外耳小骨に付着している筋不随意筋

筋とは、線維状の筋細胞(筋線維)が多数集まって全体としてひとつの活動を行うように組織されたもの

顕微鏡で見ると横紋の見える、横紋の見える横紋筋

横紋の見えない平滑筋の2つに大別される

横紋筋は骨と骨の間に付着して関節を動かす骨格筋

心臓を動かす心筋に分類される

平滑筋は血管、消化管、尿管、膀胱、子宮などの内臓の壁を作り、内臓筋とも呼ばれる

随意筋と不随意筋

骨格筋は関節運動に必要な随意筋で意図的に動かせる筋

心筋と平滑筋は意図的に動かせない(無意識)筋で、不随意筋

骨格筋について

骨格筋は全部で約700個あると言われている

いくつもの束によって構成される強靭な組織

各束は筋上膜、筋周膜、筋内膜の結合組織によって束ねられている

骨格筋細胞には筋の収縮・伸展をもたらすフィラメント構造を有している

骨格筋は肉眼で見ると、赤みを帯びている

骨格筋は両端は、緻密結合組織でできた丈夫な腱によって骨に付着している

筋の表面は緻密で強い筋上膜(筋膜)で覆われ、筋腹は筋線維の束、すなわち筋束がいくつも集まって構成

この一つひとつの筋束は筋周膜と呼ばれる密線維性結合組織によって包まれている

筋束もいくつかの束によって形作られ、この一つひとつの束も筋内膜という組織によって包まれており、この筋内膜の中に多数の筋線維

すなわち骨格筋細胞が集まっている

骨格筋細は通常の細胞と同じく細胞膜によって覆われている

毛細血管や運動神経は筋内膜上に走行しており、内側の骨格筋細胞に栄養や情報・指令を与えている

筋線維(=骨格筋細胞)内には蛋白質からなる筋フィラメントという構造があり、これが筋の収縮・弛緩をもたらしている

骨格筋は四重の束によって形作られる、複雑で強靭な組織

骨格筋細胞の中を見ると筋原線維と呼ばれる、細い糸が束になっているような構造物が確認できる

筋原線維は直径約1μmだが、いくつもの筋フィラメントという収縮蛋白質からなっている

筋フィラメントは直径16nmで長さ1~2μmの「太いフィラメント」と直径8nmで長さ1~2nmの「細いフィラメント」からできている

太いフィラメント=ミオシン

細いフィラメント=アクチン

横滑りすることで筋の収縮・弛緩が起きる仕組みである

神経細胞の終末部は筋内膜の表面に存在し、この終末部から放出される神経伝達物質であるアセチルコリンの刺激により

ナトリウムイオンが放出されることによって筋の収縮が起こる

筋の収縮・弛緩は神経細胞からの刺激によって、刺激を受けた骨格筋細胞の筋原線維が収縮運動をすることで起こるといえる

筋の呼称と形状

筋の呼称

部位による呼称胸・殿・背・側頭・上腕・膝関など
形状による呼称三角・菱形・方形・鋸状・梨状など
作用による呼称伸展・屈曲・内転・外転・括約・散大など
起始・停止による呼称起始・停止している骨名
走行による呼称垂直・斜め・横(水平)・輪状など
筋頭・筋腹の数による呼称二頭・三頭・四頭・二腹など
その他形容詞による呼称大・中・小・長・短・前・中・後など

骨格筋の呼び方(呼称)にはいつくかパターンがある

例:上腕二頭筋→部位+筋頭・筋腹にようる呼称を合わせたもの

  腰方形筋→部位+形状

  大腿直筋→部位+走行

骨格筋の形状

形状特徴部位
紡錘状筋(平行筋)単頭筋中央が膨らみ、腱の両端が骨格につながって細くなっている
筋の基本形状
上腕二頭筋・三角筋(前部・後部)
上腕筋・大胸筋など
二頭筋上腕二頭筋・大腿二頭筋
多頭筋筋肉が枝分かれしたようになって、筋頭が複数存在上腕三頭筋
二腹筋中間腱により筋腹が2つに分かれている顎二腹筋・肩甲舌骨筋・外側翼突筋・上斜筋のみ
多腹筋筋の中央部分が3つ以上に分かれているもの腹直筋のみ
羽状筋単羽状筋筋束が斜めに配列している骨格筋
形状が鳥の羽根を思わせるのでこの名
大腿四頭筋・腓腹筋・上腕三頭筋
半羽状筋羽状筋の片方だけに羽根の筋束がついた骨格筋外側広筋・内側広筋
多羽状筋
鋸筋鋸筋筋が鋸(のこぎり)の刃のようにギザギザとしている状態前鋸筋・上後鋸筋・下後鋸筋のみ
収束状筋収束状筋(放射状筋)複数の付着点から筋線維が一点に集中しているもの大胸筋・大殿部・中殿筋・広背筋
板状筋板状筋板状の筋腹の筋頭板状筋・頚板状筋
輪状筋輪状筋(環状筋)筋がリング状をなし、体内の出入り口を閉じるように働く口輪筋・眼輪筋
膜状筋膜状筋

平滑筋・心筋

平滑筋と心筋の最大の特徴は収縮と弛緩を随意に制御できない

自律神経系によって制御される不随意筋

人が自由にその動きを止めたりすることは不可能

平滑筋は筋線維の形状も骨格筋と異なって、中央が太く、両端が細く、細長い形をしている

心筋は枝分かれした円柱状の形をしている

心筋は10~20μm

平滑筋は3~8μm

平滑筋は胃など中腔がある内臓の壁や、気道、血管などに存在

フィラメントは規則正しく配列されていない

横紋模様が見られないことから「平滑」筋と呼ばれる

心筋は心臓壁を構成する筋で、心臓しか存在しない

骨格筋同様、アクチンとミオシンが規則正しく並んでいるので横紋が確認できる

「細胞の発電所」ともいうべきエネルギー産生を行うミトコンドリアの数も骨格筋よりもはるかに多く認められる

筋肉の生理学について

1、筋収縮のメカニズム(興奮ー収縮関連)

筋肉が収縮するには

脳からの興奮が神経を介して筋肉に達し、筋線維内で反応が起こり筋原線維であるアクチンフィラメントとミオシンフィラメントが滑走して

収縮が生じる

これらの一連の流れを興奮ー収縮関連という

脳からの運動神経が筋肉に達するところを神経筋接合部という

脳からの興奮が運動神経の末端であるシナプス終末に達すると、周囲のカルシウムイオン(Ca2+)がシナプス終末に取り込まれ

これを合図にシナプス小胞から、アセチルコリンという伝達物質が放出される

アセチルコリンは筋肉表面の受容器に受け止められると、筋肉の細胞では新たな興奮が生じる

この興奮は横行小管という筋組織の中に続く経路を経て筋肉の中に興奮が伝わる

筋小胞体という袋の中に保管されていたカルシウムイオン(Ca2+)が筋肉内に放出され、ミオシンフィラメントにあるトロポニンに結合し

アクチンフィラメントとミオシンフィラメントが結合する

ここまでではまだ収縮は開始しておらず、ATPというエネルギーが連結したミオシンフィラメントのヘッドに着くことでミオシンヘッドが

アクチンフィラメントを引き込み、線維同士の滑走が起こり筋収縮が生じる

筋肉が弛緩する時は、神経筋接合部で受容器に接合したアセチルコリンはアセチルコリンエステラーゼによりシナプス小胞に戻される

また、トロポニンに結合したCa2+はATPを使用して、元の筋小胞体の中に回収される

これにより、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントの連結が解かれ、筋肉は弛緩する

2、筋活動中のATP産生の方法

運動をする際に筋肉を動かすためのエネルギーが必要である

エネルギー産生には

⓵クレアチンリン酸系→⓶解糖系→⓷酸化系

の順で働く

クレアチンリン酸系

筋肉内にはクレアチンリン酸が蓄えられている

瞬時にATPが必要な運動開始時にCPとADPとの間に反応が起こりATPを産生させる

最も速い反応を起こす。CPの供給は15秒程度と短時間であるため主力とはならない

CP1分子に対しATP1分子産生

解糖系

筋に貯えられたグリコーゲンがピルビン酸に分解される過程でATPが産生される

ピルビン酸はミトコンドリア内に入ることで次の酸化系に関与し、より多くのATPを産生するが、酸化系に必要な量以上の

ピルビン酸が解糖系で産生されて余ってしまうと、これを乳酸に置き換える

このATP産生までの過程で酸素が関与しない事から嫌気的代謝(嫌気的解糖)と呼ばれ

グルコース1分子に対して2分子のATPが産生される

解糖系は30~60秒しかエネルギー供給出来ない

酸化系

解糖系で生じたピルビン酸をミトコンドリア内に取り込み、酸素と反応する事で、水と二酸化炭素に分解され

この過程の中でATPが産生される

ここではグルコース1分子に対して36分子のATPが産生される

酸化系では数時間のエネルギー供給出来る

3、筋力増強のメカニズム

ある程度の負荷を用いた筋力トレーニングを行うと筋力やパワーは増大する

筋力増強の初期は神経系の適応によってもたらされ、その後トレーニング継続によって筋肥大が生じることで

より大きな筋力となる

1)神経系要因

トレーニング開始から4週目で筋力は増大は起こっている

しかし、イメージするような筋のボリュームが増すような筋肥大は生じていない

これは、運動単位数の増加・発火頻度の増加など運動神経系の変化が影響している

2)筋肥大

神経性要因に伴う筋力増大に続き、4週目以降から目に見えて筋のボリュームが増すような筋肥大が生じる

筋肥大は、筋力トレーニングによる筋肉への刺激がタンパク質の合成を促進させることで筋厚が生じる

その中で筋線維数が増大する根拠は乏しい

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